第7話 ゲリラ狩り

(Na.)連邦評議員拉致事件に端を発したデロイアの動乱は、反乱軍の首謀者フォンシュタイン大佐と、連邦評議会議長ドナン・カシムとの和平合意が成立し、デロイア州誕生、自治権確立と理想的に終息したかに見えたが

ラルターフ「ん?

【ゲリラ狩り】

ラコック「10月6日未明連邦軍は、評議員救出別働隊と相呼応し、議事堂を占拠する反乱軍を鎮圧、ドナン・カシム議長をふくむ評議員の解放に成功しました。以上が経過です
記者「なぜここに事件の首謀者フォンシュタイン大佐が同席しているんですか
ドナン「事件は一部の地球要人たちのデロイアを制圧する口実づくりの陰謀であったことが、私と大佐の話し合いでわかったのです
ラコック「昨夜連邦軍の手で事件の張本人たちを逮捕、拘禁しました
記者「すると大佐の独立宣言はなんだったんですか
ラコック「察してあげてください、大佐の無念の気持ちを。大佐は地球とデロイアの平和を守るために、要人たちの謀略に乗ったふりをして、時を待っていたんです。
記者「なんだって?
記者「ほんとですか
ドナン「そうです。自治権の強化はありますが、地球もデロイアも一つの連邦ですから。独立ということは今後もありません
フォン「世情を操作し、デロイアと地球の離反を画策するものは、どしどしとりしまります
記者「ゲリラ狩りをするということですが

ラコック「その言い方は穏当ではありませんな。デロイアのみなさん。連邦評議会はデロイアを戦場にすることは望みません。
ラコック「一刻も早く平和を取り戻すことを願っているのです
ラコック「そのためにいくつかの方法を考え出しました
ラコック「まず第一に、取締りに協力してくださった方には、それ相当の報酬を約束します

レーク「失礼します。ラコックさん、この記事は少し行き過ぎじゃありませんか
ラコック「え?
ラコック「”協力者次々と現る”これがどうかしましたか
レーク「まだ協力者は出てないんですよ
ラコック「きっかけを作ってやったまでですよ。密告はやはり後ろめたい。その気持ちをとり除こうと。それにアジトが多く発見されれば、その中に開発中のコンバットアーマーとやらも見つかるかもしれませんしね
レーク「え?
ラコック「密告者が出れば出るほど、デロイアの意思統一は難しくなる。そうすれば独立などというたわごとは遠い物となります
レーク「…

ゲリラ「わああーーー

ゲリラ「うわあ
ゲリラ「このやろう、この
兵士「えい
ゲリラ「うおっ
兵士「あるけ。ほらいくんだ。はやくしろ

クリン(なぜこんなひどいことを。これじゃクーデターの報復をしているとしか思えないじゃないか、父さん)

クリン「!
クリン「レークにいさん
レーク「まってたよクリンくん。きみの階級をもとに戻させてもらったよ
クリン「えっ
レーク「地球に戻るには必要ないからね。君がデロイアに来た目的は一応達したんだ。あとは一刻も早く帰って母さんを安心させてやりなさい。わかったね
レーク「兄さん、その前に父さんに合わせてください
ラコック「閣下は事件の後始末に追われて非常にお忙しいんです。
クリン「ラコックさん
ラコック「あなたによろしくとおっしゃっていましたよ
クリン「えっ
ラコック「再会は地球でゆっくりなさったらいかがです?そのほうが感激も大きい
クリン「父さんに会って、聞きたいことがあるんです
ラコック「ん?なにをです
クリン「そ、それは… それはなにかわからない、だけど父さんと話せばそれがなんだかわかるような気がするんです
レーク「どうもなにをいっているのかよくわからないが
ラコック「そんなたわごとをいってると笑われますよ、クリンさん
レーク「それじゃなるべく早く帰る用意をするように
ラコック「お気をつけて

クリン「ぼ、ぼくはいったい何を

オーセル夫人「どうしたのデイジー。明かりもつけないで
オーセル夫人「クリンも無事なことがわかったんだし
オーセル夫人「もっと明るい顔なさいな
デイジー「無事なのはうれしんだけど
オーセル夫人「え?
デイジー「心配なの
オーセル夫人「わからないわ。なにをいってるんだか
デイジー「なかなか帰ってこないでしょクリン
デイジー「もうとっくに帰ってきてもいいと思うの
オーセル夫人「ふふ クリンだって子供じゃないのよ。珍しいデロイア星で観光気分でいるんじゃなくて
デイジー「クリンて昔から走り出すと止まらないところがあるの
オーセル夫人「デイジー、クリンのそんなところが好きって、よく話してたじゃない
デイジー「クリン、もう戻ってこないんじゃないかしら
デイジー「考えすぎならいいんだけど
オーセル夫人「まあ デイジー

みんな「いやっほー
みんな「いえーい

フェスタ「故障したジープが乗り捨ててあったなんてよ
ビリー「メカに関しちゃチコは最高だね
ロッキー「修理屋の息子万歳だぜ
チコ「フフフ

ロッキー「見ろ!カーディナルだ
チコ「かえってきたぜ
ナナシ「だなっし帰ってきた
フェスタ「俺たちの故郷に
ビリー「カーディナルに

ロッキー「!
ビリー「どうしたのロッキー
ロッキー「静かに。ついてこい
ロッキー「!

連邦兵「動くな!
ゲリラ「れ、連邦軍だ
ゲリラ「うっ

密告者「どうも

ロッキー「まてい
ロッキー「きさまデロイア人を売ったな
密告者「何言うんだ、おれは、おれはデロイアに早く平和を取り戻したいから協力してんだよ
ロッキー「なんだと
ロッキー「だからって、仲間を売っていいのか。同じ星の仲間をよ
密告者「し、しかたねんだよ。この金がありゃ一家五人飢えずにに済むんだ
ロッキー「!
密告者「すまねえ
?「ロッキー
ロッキー「なんてこった。かえってきてみりゃなんてこった。

将校「摘発した抵抗グループは9グループ、98名です。うち抵抗して射殺したもの38名、逮捕したものは60名にのぼっています
ラコック「わたくしの方の情報ではいくつかのグループに横のつながりがあり、カーディナル市内および郊外に潜伏しているようです。で、彼らの中心となっているのがサマリンという男で、この男がゲリラたちの信頼を集めるリーダーとして注目されています。
レーク「サマリン
将校「情報ではこのサマリンを中心にゲリラ統一を図ろうとする動きもあります
フォン「フフフフ、まあ山はここ数週間でしょう。サマリンの行方を徹底して負わせていますからな。逮捕は時間の問題でしょう

クリン「あ、ラ、ラコックさん
クリン「クリンです。すいませんが父さんを呼んでください

ラコック「困りますねクリンさん。今会議中ですよ閣下は
ラコック「地球に戻ってからでいいでしょう。別に命にかかわることでもないでしょうからね
クリン「ラコックさん、ほんの少しでいいんです。父さん、父さんに取り次いでください
ラコック「あなたはもう子供じゃないんですから、わからんことをいわないでくださいよ。閣下はお出にはなりません

クリン「もしもし、もしもし。ラコックさん

クリン「父さん

(アイキャッチ)

キャナリー「はいおまたせ
客1「キャナリー、こっちにもたのむぜ
客2「バカヤロー、こっちが先だ。キャナリー
キャナリー「なによキャナリーキャナリーって。気安くよばないでちょうだい

キャナリー「あ
客1「今度の休みにデートしようぜキャナリー
キャナリー「なによそんなお金もないくせに
客1「ゲリラのやつを軍隊に密告すりゃあちょいとした金にならあな
キャナリー「そんな汚いお金でだれがあんたなんかと
客1「じ、冗談だよ冗談。なキャナリー
キャナリー「あっ
客1「べつに取って食おうって言ってんじゃないぜキャナリー。ただいっぺんつきあってくれっていってるだけじゃねえか、おい
客3「ひひひひ、キャナリーちゃんあそんでやんなよ
キャナリー「フン
キャナリー「やめてよはなして
キャナリー「はなしてよ
客1「このう優しくしてりゃあつけあがりやがって
客1「!
客1「いてっ
客1「おっ
ロッキー「いじきたねえまねをするんじゃねえ
客4「ロッキー
客5「ロッキーだ
客6「ロッキー
キャナリー「ロッキー
ロッキー「ふふ、帰ってきたぜ

キャナリー「地球に行ってしまって3年。何の音さたもなしでさ、いきなりだもん。驚いちまったよほんとに。
ロッキー「兄貴はどうしてる
キャナリー「独立軍に志願してうちを出てそれっきり。男はみんな同じね
ロッキー「あん?デロイアもだいぶ変わっちまったな
キャナリー「悪くなっちまったよむかしより

ラルターフ「厳しい情勢になってきましたねサマリンさん
サマリン「確かに、我々デロイアの独立を願うモノにとっては、今回のフォンシュタイン大佐の寝返りは許しがたい
ラルターフ「サマリンさんもやはり大佐は寝返ったと
サマリン「いや。最初からしくまれていたのでしょう
サマリン「要人たちの陰謀とドナンカシムは言ったが、乗せられたのは要人たちの方でしょう。あの二人に
ラルターフ「そしてデロイアに芽生えかけていた独立派も
サマリン「そうです。
サマリン「大佐の独立宣言にみごとにだまされました。まだ組織づくりも固まっていない独立派が、わっと表に出てしまいましたからね
ラルターフ「ということはドナンカシムの真の狙いは独立つぶしですね
サマリン「そのとおりです。デロイアの独立を阻止するためには、根は小さいうちに摘み取る方が楽ですからな
ラルターフ「その意味ではドナンカシムの方策の第一段階は成功したわけか
サマリン「次はどう出るか
ラルターフ「うむ…

ゲリラ兵「うわあ

クリン「!

ゲリラ兵「うわっ
ゲリラ兵「撃つなー
連邦兵「へへ
連邦兵「根性無しが
ゲリラ兵「うわっ
連邦兵「降伏するくらいなら初めから抵抗するな

クリン「やめろ!
クリン「やめろ!やめてくれ

クリン「やめてくれ、無抵抗じゃないか
連邦兵「地球人のくせに貴様ゲリラに味方する気か。情けは必要ねえんだよ
クリン「うわっ
連邦兵「デロイアは観光には向かねえぜ坊や。地獄を見たくなかったらさっさと地球に帰りな
クリン「なにっ
連邦兵「すごむなよ坊や
クリン「うわーっ
連邦兵「お
クリン「みんな、銃を捨てろ
クリン「なにしてるんだ、早く銃を捨てろ
クリン「脅しじゃないぞ
連邦兵「助けてくれ
クリン「何してる、早く逃げろ

連邦兵「おい、さっさと出てくるんだ
連邦兵「隠れんぼはもうおわりだよ
連邦兵「いい根性だが坊やにできるのはもうそこまでだ。出てこい
連邦兵「上等な真似してくれてよ、かわいがってやるから出てきな
連邦兵「なにやってんだ早く出てこい
クリン「うわーっ
クリン「この、この
連邦兵「このやろう、よくも
連邦兵「なかなかいい根性しているが、ゲリラを逃がされたんじゃ容赦できねえ

連邦兵「おおっ

クリン「危ないところを、助かりました
ラルターフ「この貸しはいつか返してもらうよ
サマリン「キミがクリンカシム君だね
クリン「ど、どうして僕のことを
サマリン「ラルターフ君の話の中でしきりに君の名前が出てきたのでね
クリン「えっ
ラルターフ「ん、んん
サマリン「はははははははは

ラルターフ「連邦軍に出入りする記者が一方ではゲリラの指導者にあっている。これが世の中だよ
サマリン「今度の父上たちの行動をどう考えるかね、クリン君
クリン「わからなくなっているんです。いま
ラルターフ「しかし、賞金とは考えましたね。密告者が増えれば増えるほど、デロイアの意思統一は難しくなる
サマリン「密告の愚かさに気付くはずです、そのうちに。お父上はデロイアの独立を恐れて今度の芝居を打って出たのです。逆に独立運動の機運を高め、デロイア人の結束は強まっていきますよ

サマリン「さっきラルターフ君がドナンカシムの方策は成功したといったが、むしろ失敗といった方がいいかもしれん
クリン「なぜ
サマリン「デロイア人は今度のことでいやでも戦いの中に投げ込まれてしまったのですよ
クリン「でも、武力では圧倒的に連邦軍の方が優れていますよ
サマリン「どんな独立でも武力だけでは勝ち取れない。しかし、武力なしで勝ち取ることはできない
クリン「!

ゲリラ「これはサマリンさん
サマリン「私の友達だ。安心してくれ

クリン「こ、これは
クリン「コンバットアーマー
サマリン「我々の科学力のすべてを注いだ。二重太陽、Xネブラ。デロイア星の特殊な条件に合わせて力を発揮できるように開発したものだ
クリン「しかしなぜ、敵側の指導者の息子である僕に
サマリン「君は君だ。ドナンカシムではない
クリン「はっ
サマリン「私は個人を信じる。組織だとか社会を後ろ盾にする人間は軽蔑する。個人があってこそ社会が成り立っているんだよ、クリン君

次回予告

デロイアゲリラが開発したXネブラ対応型コンバットアーマー・ダグラムは ついにその姿を見せた。その性能は? その力は? ダグラムが、デロイアに新たなる風雲を呼ぶ。
次回「裏切りのデロイア」 Not even justice, I want to get truth.
真実は見えるか。