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#5 戦時特例法205号

【サンドレア基地】

地上の兵士 「ムリだ!そういう命令なんだ!いいか、頼んだぞ」
デューイパイロット 「へっ、命令ね。わかったよ」

兵士 「前へすすめ!」

(Na)「戦時特例法205(にーまるご)号」

将校 「まだ格納庫の修理に取りかかっておらんのか!」
兵士 「はあ。なにぶん物資が不足しておりますので」
将校 「応急処置でもかまわん!とにかくすぐにかかれ!」
兵士 「はっ、わかりました」

クリン 「はあ…はあ…」
ラルターフ 「ん?」
  「よう、クリンくん」
ラルターフ 「?」
女性将校 「あん!」
ラルターフ 「ん? フフフ」
クリン 「あっ、どうもすみません」
  「申し訳ありません、少尉!」
  「あの、急いでいたもので。つい」
女性将校 「拾っていただけるかしら。暴走族さん」
クリン 「は、はい!」
女性将校 「以後基地の中では制限速度を守りなさい」
クリン 「はい」
  「以後気をつけます! 失礼します!」
女性将校 「うふっ」

ラルターフ 「連れて行かないのか」
ラコック 「あなたなら連れて行きますか」
ラルターフ 「フフフフフ。あんたは理想的だな。ドナン・カシムの秘書としては」
ラコック 「おほめの言葉と受け取ってよろしいんでしょうか」
ラルターフ 「ご自由に。ところでどこに降りるんだ」
レーク 「カーディナルから120キロ地点だ」

クリン 「…」
ラコック(回想) 「救助はわれわれにまかせておきなさい」
クリン(回想) 「僕はお荷物だというんですか」
ラコック(回想) 「ではあなたがわれわれのためになにかできるというんですか」

通信兵 「ブラックダイヤからホワイトパールへ。へドルの海は荒れているか?ブラックダイヤからホワイトパールへ。へドルの海は荒れているか?」
通信相手 「こちらホワイトパール。へドルの海は波静か。カモメは島へ向かって飛ぶ」
通信兵 「了解」
  「ボイド隊は異常なく作戦どおり進撃しています」
基地司令(ロックウッド少佐) 「時間どおりだな」

フォン(夢) 「ドナン・カシム。きみは連邦評議会代表としてわれわれに協力してもらう」
ドナン(夢) 「ことわる」
フォン(夢) 「君らの時代はもう終わりを告げた。われわれに従わなければきみは二度と家族の顔は見られんことになる。それでもいいのかね」
ドナン(夢) 「なんといわれようと君らのいいなりにはなれん」
  「うわっ」
クリン 「!」

修理責任者 「おいそこの!なにやってん… もっと左だ、左!」
  「貴様!こんなところに入ってきたら仕事ができんだろうが!さっさと出ていかんかこのくそったれが!」
運転手 「そんなこと言ったって上からの命令だから仕方ないだろ!そのでかぶつを運ぶんだとよ。人手がたりないんだ、手伝ってくれ!」

ラコック 「この2つのブリッジとゲートを2機で封鎖します」
ラルターフ 「ちょっと質問させてもらってもよろしいかね」
レーク 「いやだ、とは言えんでしょうな。あなたがたを怒らせたらあとがこわい。女性とジャーナリストは水爆を扱うように、というのが私のモットーでしてね」
ラルターフ 「ふん。フォン・シュタインの兵力2000を2機で食い止められるというんですか」
レーク 「本隊も来る。人質救出の作戦は本隊と合流して行われる」
ラルターフ 「議事堂の兵力は?」
レーク 「コンピューターのモデル試算では200と出ている。残り兵力は市内をおさえているようだ」
ラルターフ 「その200の中へレインジャーを侵入させて残りのソルティックが突入するわけか」
レーク 「そうだ。最終モデルパターンから決定されたのがソルティック4機による突入作戦だ。フォン・シュタインの作戦能力もインプットされている」
ラルターフ 「ゲリラとのつながりは」
ラコック 「その情報ならわれわれよりあなたのほうがずっとお詳しいはずだ。あなたの記事はつねにわれわれにデロイアのことをよく教えてくれる」
ラルターフ 「オレは真実を伝えようとしているだけだ」
ラコック 「私は事実を読み取ろうとしています」
パイロット 「大尉!交信エリアから出ました」
ラルターフ 「中継ゾンデか。あれの世話にならんと基地と話もできんとはな」

整備兵A 「オーライオーライ、ストップ!」
整備兵B 「おーい、そっちは固定したか?」
整備兵C 「オッケーだ!」
整備兵D 「よーし終了だ!おっ?」
整備兵E 「? 誰だ!」
  「またきさまか。何をするつもりだ!」
クリン 「すみません。ソルティックを借ります」
整備兵E 「バッキャロ、降りるんだ」
クリン 「失礼します」
整備兵E 「うおっ」
  「あのやろう」
  「そうだ。あの見習い坊やだ」
  「おれが?冗談じゃねえ。だれがそそのかすか」
  「しらねえよ。何をする気なのか」

ロックウッド 「おい、また敵襲か。人形あそびは一回で終わりだ!降りろ!これは命令だ!」
クリン 「いやです!僕も出撃させてください!」
ロックウッド 「くそっ」
  「ゲートを封鎖しろ!トレーラーがそっちに向かっている。いいか、子供だから銃は使うな」
門衛 「わかりました」
  「おーい、止まれ」
  「止まれ!こら止まらんか!と、えーい」

通信兵 「大尉!ロックウッド少佐から電話です」
レーク 「お待たせしました、ボイドです。はい、はい。ええっ、クリン・カシムが? わかりました。ここへあらわれたら命令違反で逮捕します」
  「クリンがこちらへ向かっているらしい。基地のソルティックを持ち出してな」
ラコック 「んー。いつもこれだ。いったい彼は士官学校でなにを学んだんですかね」
レーク 「作戦はスケジュールどおり実行するぞ」
ラコック 「当然です。わたくしとしては、彼がわれわれに対して支障のないよう行動してくれるのを祈るだけです」

(アイキャッチ)

レーク 「ソルティック隊、ここから先は敵レーダーの補足範囲に入る。十分に注意しろ」
ダーク、ノートン、ベリオン、ブルーム 「了解」
レーク 「ボイドだ。クリンからの連絡は」
通信兵 「まだありません」
レーク 「あったらすぐしらせてくれ」
通信兵 「了解」

ラコック 「これ以上あなたに何を教えればいいのです。あなたはわれわれと行動をともにすることでじゅうぶんに特ダネをものにできるはずです」
ラルターフ 「そうですかな」
ラコック 「そうです。われわれは従軍記者としてのあなたに多分に敬意を表しているはずですが」
ラルターフ 「どうですかな。ならば今度の作戦の前提条件についてお教え願えないかね」
ラコック 「前提条件?」
ラルターフ 「ドナン・カシムが人質になって何日になる」
ラコック 「五日目です」
ラルターフ 「フォン・シュタインにとって、ドナン・カシムは切り札だ。五日の間にどこかに身柄を移されたことを考えなかったのかね」
ラコック 「つまりドナン・カシムがずっと議事堂に囚われていると見ていることですか?」
ラルターフ 「そうさ。俺の知る限りにおいて露ほどもそのことをうたぐってはいない」
ラコック 「しかしモデル試算の結果ですから」
ラルターフ 「そうかね。オレがフォン・シュタインならさっさと議事堂からエースを移すな。人目につかぬところへ。クーでデターの成否がかかっているとすればなおのこと」
ラコック 「あなたはフォン・シュタインではありません」
ラルターフ 「だが知っているよ。用心深くなければデロイア人として大佐まではなれん。フォン・シュタインの行動としては単純すぎる」
ラコック 「わたくしとしてはコンピューターの出した結果をただ信じるしかないんです」

ダーク 「ノートン。異常はないか」
ノートン 「静かなものよ」
ダーク 「ブルームは」
ブルーム 「あーあ。眠くなりそうだよ」
ダーク 「ベリオンはどうだ」
  「オレなんか居眠り運転よ」
ブルーム 「ん?」
ダーク 「どうした」
ブルーム 「!」
ダーク 「うわっ」

レーク 「ダーク!どうした!」
ダーク 「敵のパトロールヘリと遭遇。一機を撃墜しました」
レーク 「周囲に敵の気配は?」
ダーク 「わかりません」
レーク 「見つけ次第殲滅しろ!われわれの存在を本部に知られてはいかん」
ダーク 「了解」
  「借りができたなノートン」
ノートン 「利子は高いぜ」
ダーク 「ふ、返すんなら早いほうがよさそうだな。いくぞ!」
ダーク 「通信ゾンデか」
  「やったか」
ノートン 「さすがだな」
ダーク 「まあな」
ノートン 「今度はオレだ」
ダーク 「おみごと」
ノートン このくらい目をつぶっててもあたるさ」
ダーク 「ノートン!」
  「集まりすぎだ!散れ!」
  「援護しろ!一発で倒す!」
クラブガンナー操縦士 「下か!」
  「とべーっ」
ダーク 「まだいるはずだ、気をつけろ」

通信兵 「定刻どおりです。ボイド大尉の救出部隊もまもなくカーディナルに迫るはずです」
アナウンス 「三番隊、四番隊、発進!」

兵士 「大尉!敵の戦闘メカは4機のようです」
レーク 「ダーク!クラブガンナーは4機で全部だ。先頭の一機ははこちらでなんとかする。残りは頼んだぞ!」
ダーク 「了解!ブルーム、べりオン!後ろの三機をわれわれでたたく。いいな!」
ブルーム、ベリオン 「了解!」
ダーク 「いくぞ!」
ベリオン 「くそー、ブ厚い装甲だ!」

ダーク 「ベリオン、やたら撃ちまくってもだめだ!後ろを狙え!」
クリン 「近いな」
ベリオン 「ああ、わかっているがな、なかなかそうはうまくはいかねえんだ」
クリン 「あれか」
レーク 「いいか、合図とともにいっせいにコクピットを狙え。一発もはずすな! 5、4、3、2、1、てえ!」

兵士 「だ、だめだ!」
ダーク 「ブルーム、後ろへ!攻撃しろ!」
ブルーム 「わかった!」
兵士 「くるぞ、下がれ!」
兵士 「うわーっ」
レーク 「べりオン!済んだか?こっちがあぶない!たのむ!」
ベリオン 「了解!」
  「ええい、くそう」
ラコック 「ああ」
  「クリンさん」
レーク 「クリン」
   「!」

ダーク 「大尉、命令違反で逮捕しますか?」
レーク 「当然だな」
ラコック 「大尉、兵力の再点検を済ませたところなんですが、パイロット1名戦死、兵士5名負傷。そして、ソルティック1機を失いました。したがってわたくしは連邦評議会代表秘書官として、クリン・カシム君を補充要員として迎えるよう大尉に要請いたします」
クリン 「あ、あ、ありがとうラコックさん」
レーク 「しかしだな、ラコック」
ラコック 「わたくしの今の発言は、閣下の意向を受けた公人としての発言です。あなたがなにものであれ、パイロットとしては有能らしいということ、それだけです」
ラルターフ 「いいのかね、秘書官として」
ラコック 「サイコロを振ったまでです」
レーク 「クリン・カシム。戦時特例法205号に基づき、戦場における指揮官の権限において君を准尉に任じ、戦列に加わることを命ずる」
クリン 「はい!」
レーク 「よーし!ただちに出発する!」

【カーディナル市】

クリン

「父さん、待っててください。もうすぐ僕の手で父さんを助け出す。待っててくれ」

(Na.)SC152(いちごーに).10月5日未明。救出部隊は首都カーディナルを眼下にする北8キロ地点、バーディング・ヒルに達した。

次回予告

動乱の都カーディナルを眼下にして、クリンの心ははやる。
父は無事か。
鉄の戦士に翼付け、荒ぶる魂がテイクオフ。
次回「暁の救出作戦」
Not even justice, I want to get truth. 戦場の夜明けに真実が見えるか。