ホーム > 太陽の牙ダグラム > #4 実戦のコクピット
本文

#4 実戦のコクピット

客1 「きみ、なぜチケットを売らないんだ」
客2 「オレの予約はどうなってるんだ!」
係員 「申し訳ありません、軍命令で今朝から地球への便は閉鎖されているんです」
「そ、それはデロイアが独立宣言したためかね」
「戦争がはじまるの?」
男2 「いつ解除になるんだよ」
係員 「わからないんです、なにも。申し訳ありません」

(Na)「実戦のコクピット」

レーク 「入るぞ」
クリン 「はい」
レーク 「クリンくん」
クリン 「用意はできています。いつ発ちますか」
レーク 「ここはわれわれ軍人に任せて、君は地球に戻ったほうがいい。お母さんも心配してるだろうし」
クリン 「えっ」
レーク 「軍のルートで帰れる手続きをしておく」
クリン 「レーク兄さん!」
  「レーク兄さん…」

レーク 「司令官、連邦評議会から反乱軍への解答はまだなんですか」
ブレナー 「まだない」
レーク 「そうですか」
ブレナー 「したがって解答前の軍の行動は慎重を要する。反乱軍を刺激して人質にもしものことがあると困るんでな」
レーク 「わかりました。我が別動隊は準備が整いしだい首都カーディナルへ出発します」
ラコック 「ボイド大尉、別動隊の編成は」
レーク 「ええ、アイアンコンバット5機、レインジャー1中隊、それにデューイ戦闘ヘリ3機です」
ラコック 「それじゃ少なすぎはしませんか」
レーク 「いえ、隠密行動をとるにはこれで十分だと思います」
ブレナー 「うむ。その後の情報によると反乱軍はサンドレアを次の目標に動きだしたらしい」
レーク 「サンドレア?」
ブレナー 「そうだ。北極基地からカーディナルへの中継地点だ」
ブレナー 「じゅうぶん気をつけてくれたまえボイド大尉。失敗は許されないからな」
レーク 「はっ」

クリン 「このまま黙って地球に戻れるものか」

クリン 「よし」
ビリー 「クリン!」
クリン 「?」
ビリー 「へへっ。やあ」
クリン 「ビリー!まだここにいたの」
ビリー 「ひどいよほんとに。軍命令とやらでさ、一晩止められちゃって。はやく帰りたいのに。クリンもカーディナルに?」
クリン 「ああ、そのつもりさ」
ビリー 「直行便はないんだって。サンドレアから鉄道じゃなくちゃならないんだぜ」
クリン 「え?そ、そうか…サンドレア回りしかないのか。ま、なんとかなる」
ビリー 「でも、クリンはデロイアのことはよくわかんねえんだろ?」
ロッキー 「ビリー!そんなやつにかまっているな」
ビリー 「でも…クリンは大変だもん、これから」
ロッキー 「やつだって子供じゃないんだ。変に気ぃ使っちゃ失礼だぜ。なあ」
  「いこうぜ」
ビリー 「ま、待ってよ、ロッキー!」

ビリー 「ねえロッキー。どうしてクリンに冷たくすんの」
ロッキー 「俺たちとやつとは住む世界が違うんだ」
ビリー 「だけど、それはクリンのせいじゃないだろ。地球でだってそんなこと鼻にかけてるそぶりも見せなかったし」
ロッキー 「いいかビリー。現実はそうはいかないんだ。そんな甘いもんじゃないんだぜ」
ビリー 「…」

レーク 「クリンくん。クリンくん!」
レーク 「!」
レーク 「クリンくん!おっと」
ラコック 「ああ、クリンさんのことなら、軍に頼んでおきましょう」
レーク レーク「時間もないし、しかたない。そうするか」

【サンドレア空港】

ラルターフ 「クリンくん」
  「また会ったな、クリンくん」
クリン 「あなたは」
ラルターフ 「いても立ってもいられなくなってここまで来たのはわかるがね、もう少し先のことも考えたほうがいい」
  「まあ、それがきみのいいところかもしれん。実はわたしもカーディナルの情報が知りたくてね」
クリン 「なんだってぼくにつきまとうんですか」
ラルターフ 「ん?そうみえるか」
  「なんでと言われりゃ、あんたがドナン・カシムの息子だからさ」
  「おっと怒るな。顔見知りになっとけばなにかと都合がいい」
クリン 「… あっ」
ラルターフ 「ん?」
  「フフフフ」

フェスタ 「なんだよ、どういうことなんだよこれは」
駅員 「申し訳ありませんがカーディナルには当分の間入れません。軍命令で列車も当分運休です」
ビリー 「そんなバカな」
フェスタ 「空港じゃそんなこと一言も言わなかったぜ」
ビリー 「ここまで来て帰れないなんて俺やーだよ」
フェスタ 「どうする、ロッキー」
ロッキー 「ここまで来たんだ、歩いてだってカーディナルに行くぜ」
フェスタ 「そうだ。そのうち動き出すかもな」

ビリー 「あっ」
  「うわーっこんなとこ歩いてくの?」
ロッキー 「そうだ」

ビリー 「ねえ、ロッキー」
ロッキー 「なんだよ、うるせえな」
ビリー 「見てよ後ろ」
ロッキー 「ん?」
フェスタ 「あいつしつこいよな」
ビリー 「ねえ、一緒に行ったっていいじゃないかよ」
ロッキー 「ついてこられちゃ迷惑なんだよ」

フェスタ 「おい、駅だぜ」
みんな 「おっ」
チコ 「なんか様子がおかしいぜ」

兵士 「これより先は通行禁止だ。戻れ戻れ!」
ビリー 「なんだってんだよ。カーディナルに帰るのがなにがいけないんだよ」
兵士 「デロイア人だな」
フェスタ 「そうさ。カーディナル生まれよ」
兵士 「だったらなおさらダメだ。反乱軍に味方するかもしれんからな」
クリン 「!」
フェスタ 「ちっきしょう。よう、デロイアに帰ってきてからも地球人に命令されるなんてよ。冗談じゃねえぜ!」
兵士 「早く戻れ!」
ビリー 「へん。撃てるものなら撃ってみろってんだ」
みんな 「うわあっ」
フェスタ 「びっくりした」
ビリー 「本気で撃ちやがんの」
ロッキー 「フフ」
クリン 「フ」

アナウンサー 「デロイアの独立宣言を受けた連邦評議会はただちに北極ポートを閉鎖、反乱軍の次の行動にそなえています」
サラ 「お母様」
フィナ 「だいじょうぶですよ。お父様は」
デイジー 「おばさま」
フィナ 「いらっしゃい、デイジー」
デイジー 「おばさまごめんなさい」
  「こんなおそろしいことになるとは思ってもみなかったので」
フィナ 「ええ?」
デイジー 「クリンが、クリンがデロイアに行ったこと口止めされていたの」
フィナ 「クリンが」
サラ 「あの子ったら」

ラビン 「なに? クリンが? しかしどうしようもないだろうさ。いまそれどころじゃないんだ。またあとで」
  「あのバカが無鉄砲に」

社長 「デロイアで戦争がはじまれば軍事部門は大いに潤う。がんばってくれたまえよ」
秘書 「失礼いたします。ロイルチーフにご自宅からお電話が入っておりますが」
ロイル 「今は忙しい。悪いが、あとでかけなおすといってくれ」

サラ 「ラビン兄さんもロイルも仕事に夢中なんだから」
フィナ 「心配しなくてもクリンはだいじょうぶですよ」
デイジー 「おばさま」
サラ 「それにしてもロイルなんて戦争がはじまるのを喜んでいるみたい。ラビン兄さんにしても、今が出世のチャンスだといわんばかりの騒ぎよう」
フィナ 「男には少なからず野望がありますから」
デイジー 「クリンだけがおじ様のことを」
フィナ 「あの子はね、ドナンに似て純粋なのよ」

(アイキャッチ)

ラコック 「おっ」
  「ボイド大尉。ちょっと止めてください」

ラコック 「きみは」
ラルターフ 「何度目ですかな。お会いするのは」
  「これは毛嫌いされたものですな。カーディナルまでご一緒させていただきますよ。今度は」
レーク 「きみはたしか」
ラルターフ 「ラルターフです。APU通信の。ラコック氏には地球でずいぶんお世話になりましたよ。」
ラコック 「何度すっぱぬかれたことか」
ラルターフ 「ふふふ。情報も流しましたよ、逆に」

ビリー 「また空港に逆戻り?骨折り損のくたびれもうけだね」
チコ 「んー? フン、クーデターじゃしかたねえ」
フェスタ 「それもこれも地球人があんまりいばりくさるからよ!」
ビリー 「よしなよ」
ロッキー 「おっ」
クリン 「あっ、あれはレーク兄さんの部隊だ」
ビリー 「えっ? そうか、ねえクリン。あの部隊はカーディナルに行く途中なんだろ。便乗できないかな」
フェスタ 「そうだ。クリンの兄貴の部隊ならクリンのいうことくらい少しは聞いてくれるよな。ええクリン」
クリン 「あ、ああ」
ロッキー 「バカ!そんなことできっこねえだろ」
ビリー 「でも軍隊と一緒ならどの検問もフリーパスだ」
フェスタ 「そのほうが早くカーディナルに帰れるしよ。なあクリン、いいよな」
クリン 「うん」
ロッキー 「しかし、今俺たちがどんな立場にいるか考えてみろ」
チコ 「ロッキー。ここはひとつ折れてみようじゃねえか。な」
ロッキー

「ちっ」


ラルターフ 「このデロイアに高性能のコンバットアーマーが開発されているとのうわさですが…。どうなんでしょうかね」
レーク 「ラルターフさん、そのうわさは」
ラルターフ 「なんでも、そのコンバットアーマーはXネブラ対応型だというんですがね」
レーク 「Xネブラ対応型」
ラルターフ 「さよう。高周波コンピューターの性能を低下させるあのやっかいなXネブラ星雲のことはご存知ですな」
レーク 「おかげで最新鋭のコンピューター制御を備えた近代兵器もこの星ではお手上げだ」
ラルターフ 「だからXネブラ対応型コンバットアーマーがあれば、このデロイアでの戦闘は相当数有利になる。なのに」
レーク 「それがなにか」
ラルターフ 「いや。ああ、そのXネブラ対応型コンバットアーマーの完成を見ずにデロイアになぜクーデターが起こったか。このタイミングにこの動乱の重大な意味が隠されているように思うのですが。ねえラコック秘書官」
ラコック 「さあ。おっしゃる意味がよくわかりませんな」
ラルターフ 「あれは。弟さんではないかな」
レーク 「ええっ」
クリン 「レーク兄さん」
レーク 「クリンくん」
ラコック 「こんなところに来ていたんですか」
クリン 「助かりましたよ、レーク兄さん」
レーク 「!?」
クリン 「いても立ってもいられなくて先にここまできたものの、ここからさき軍の検問が厳しくて追い返されてしまいました」
レーク 「まあ来てしまったのはしょうがないとして、彼らは」
クリン 「彼らもカーディナルへ戻るところで足止めをくってしまって。悪いんですがみんなも同行させてやってください」
ラコック 「デロイア人ですね」
レーク 「…」
クリン 「そうです。地球での仲間で、すいぶん世話になった連中です」
ラコック 「いくらクリンさんの頼みでもこれだけはだめです」
クリン 「えっ」
ラコック 「クリンさんひとりならかまいませんが、デロイア人となると。今は微妙な時期ですからね」
クリン 「そんな。今ロッキーたちと戦っているわけじゃないんですよ。ラコックさん!」
ラコック 「同じデロイア人です」
クリン 「! レーク兄さん」
レーク 「クリンくん」
  「ぼくもラコックさんと同じ意見だよ」
ラコック 「クリンさん。あなたはデロイアに何しに来たんです。こんなデロイア人を助けるためじゃなかったはずですがね」
フェスタ 「なにっ!」
クリン 「レーク兄さん」
クリン 「選びたまえ。どっちを取るか」
クリン 「!」
ロッキー 「フフ。だから言ったじゃねえか。ムリだって」
クリン 「ロッキー」
ロッキー 「オレも甘ちゃんだったぜ。ちょっとの間でも地球人のお情けをアテにしようとしたのがな。あばよクリン」
ラルターフ 「つらいところだな。クリンくん」

兵士 「うわーっ」
レーク 「敵襲だ!」
  「クリンくん乗れ!行くぞ!」
クリン 「はい!」
レーク 「しっかりつかまっていろ」
ラルターフ 「よいしょっと」
クリン 「兄さんあれ!四本足!」
レーク 「ソルティックを大至急用意しろ!急げ!」
兵士 「おおっ」
兵士 「うわーっ」
兵士 「パイロットがやられた!予備員、急げ!」
レーク 「おおっ」
クリン 「兄さん!左だ!」
4人 「うわーっ」
クリン 「おっ?」
パイロット 「うわーっ」
クリン 「このままじゃ」
クリン 「ようし」
クリン 「しめた。パワーオンしてるぞ」

クリン 「立てよ!」
クリン 「おおっ」
クリン 「さすが新鋭機だ。クラブガンナーとは動きが違う」
クリン 「やった!」

クリン 「ん?あっ」
クリン 「うわーっ!」

レーク 「いかん!クラブガンナーは装甲が厚い。機銃じゃムリだ!」
クリン 「うわあーっ!」

レーク 「おおっ」

レーク 「クリン!」
クリン 「ううっ…」

クリン 「やったぞ… これがあれば父さんだって助け出すことができるぞ」

レーク 「かなりの損害がでてしまった」
ラコック 「でもソルティックが全滅しなくて不幸中の幸いでしたな」
クリン 「レーク兄さん!」
  「みてくれましたか。できますよ。僕にも」
レーク 「勝手な行動をとるなといったはずだぞ、クリンくん。君はまだ軍人ではないんだ」
レルターフ 「しかしクリンくんのおかげで命拾いしたんですよ、ボイド大尉」
レーク 「…」

ラルターフ 「しかし腑に落ちない点が多すぎる。どうも引っかかる」

次回予告

吹き飛ぶ砲塔、ちぎれるキャタピラ、燃える装甲板。
踏みしめる大地から動乱の鼓動が伝わってくる。
父のいる都は未だ遠く、行軍は続く。運命はクリンを戦場へと誘う。
次回「戦時特例法205号」
Not even justice, I want to get truth. 真実は見えるか。