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#1 光りの戦士

(Na)鉄の腕は萎え、鉄の足は力を失い、埋もれた砲は二度と火を吹くことはない。
鉄の戦士は死んだのだ。
狼も死んだ。獅子も死んだ。 心に牙を持つものは、すべて逝ってしまった。

キャナリー 「あっ」
キャナリー 「!」
クリン 「あっはははは」
ビリー 「イエーイ」
ナナシ 「だはははは」
フェスタ 「へへへ」
キャナリー 「ロッキー!」
ロッキー 「はーっははは」
キャナリー 「あははははは」
クリン 「イエーイ!」

(Na)「光りの戦士」

(歌) 「西だ 東だ 南だ北だ トンナンシャーペイ右左 犬が西向きゃ尾は東 まわり全部が敵ばかり」

ナナシ 「なっし」

ロッキー 「まだ10分ある。いくぞ」

連絡員 「このダムシティは数少ない我が勢力圏だ。だが、ここの連邦軍ダンクーガー基地に補給物資が届けばその優劣が逆転する」
  「だから、軍用列車をダンクーガー基地に入れてはならない。よってデロイア7はこの赤い谷で列車を襲撃、ダンクーガー基地への補給を阻止してもらいたい」
  「推定される敵の戦力は護衛装甲列車2、兵員50だが、その他に」
ナナシ 「やっほう!」
フェスタ 「どうしたナナシ!」
ナナシ 「いまこんなでっけえ星が流れていったッス」
フェスタ 「バッキャロー!おどかすない。なんでえ流れ星ぐらい」
チコ 「フ」
ナナシ 「ほーらまた流れた!キレイだナッス」
チコ 「おーおー、おめえは詩人だよ」

ロッキー 「作戦を確認する。いいか」
ロッキー 「チコ!聞こえるか」
チコ 「オーケイ、聞こえるよ」
ロッキー 「俺が標的の足を止める。チコは警備走行車両を頼む。たぶん銃座は前に2箇所、最後部に2か所だろう」
ロッキー 「ビリー!おまえはその上からもし増援車両が来たら」
  「こら!姿を出すなって」
  「増援車両の足を止める」
ビリー 「わかった」
ロッキー 「クリン、ダグラムの機嫌はどうだ」
クリン 「上機嫌」
ロッキー 「よーし、始まったら一気に駆け下りろよ」
クリン 「オッケイ」
ロッキー 「フェスタ、いい場所は見つかったか」
フェスタ 「ばっちし」
ロッキー 「お前は唯一の対ガン戦力だ。アタックのタイミングを間違えるな」
フェスタ 「オーケイ」
ロッキー 「キャナリー、レーダーの方はどうだ」
キャナリー 「オッケイよ。これで半径20キロの空域はカバーできるわ。それより遠くは敵も味方もレーダーが利かないから、Xネブラ星雲さまさまね。目下のところ異常なし」

ナナシ 「シェーあたっ、いてえなッス」

フォン 「ダムシティは確かに戦略上の重要な地であり、ダンクーガー基地への補給が急を要しているのも事実だ。だが諸君らの任務はそこにあるのではないということを肝に命じてもらいたい。一にかかって、太陽の牙撃滅にあるのだ。あえて言えば列車は高価なる囮だ。この作戦にミゲロ大尉、君を指名したわしの期待を裏切らんでくれたまえ」
  「繰り返していうが、期待しておる」
ミゲロ 「はっ、光栄であります。戦果をご期待ください」
  「発進!」

ミゲロ 「作戦を繰り返すぞ!われわれの任務は列車およびその積載補給物資の護衛が目的ではない。あくまでも太陽の牙を倒すことにある。
そして、列車が襲撃を受ける前には20キロの距離をとって進む。
列車が襲撃を受け、長距離通信用ゾンデによるSOSが入りしだい現場に急行、太陽の牙を討つ!
作戦が成功すれば二階級特進もんだぞ!きばれ!」

兵士 「よーべっぴんさん、どこいくんだい?」
兵士 「愛しい人でもおっかけてんのかい?え?」
兵士 「振り向いてよ」
兵士 「なにが入ってんだい」
兵士 「おっとっと」
分隊長 「アンジェロ、ほら見ちゃいられねえよ、手を貸してやれ」
アンジェロ 「よしきた!
おじょうさん、荷物を持ちますよ。
遠慮することはねえ、きれいな人が苦労しているのを見ちゃいられねえ性質(たち)なんでさあ。ねえ、ちょっとなんとか言ってよ」
分隊長 「アンジェロ、ふられたな。二枚目がカタナシだぜ。ハハハハハ」

駅員 「ん?」
デイジー 「ダムシティへの次の便は何時に出ますか」
駅員 「ダムシティへまでの次の便は、あの臨時の軍用列車が入ったから2時間遅れの3時ですね」
デイジー 「ダムシティまでください」
駅員 「お、おひとりですか」
デイジー 「ええ」
駅員 「何の用事があるのか知らんが、あそこはあんたのような若い娘が行ところではありませんぞ。ダムシティは現在ゲリラの勢力下にありましてな。みたところあんた地球の人じゃろ」
デイジー 「ええ。でもどうしても行きたいんです」
駅員 「うーん悪いことは言わん。できたら行かんほうがいい。治安は最悪、というよりあそこは戦場ですぞ。いや列車だって、まともにダムシティにつく保証もないんじゃ。悪いことは言わん、ここから引き返しなさい」
デイジー 「ありがとう。でもどうしても行かなければならないんです」
駅員 「…」
デイジー 「ありがとう」

ラルターフ 「失礼。地球の方のようですな」
デイジー 「はい」
ラルターフ 「わたしも地球からでしてな。ちょっとかけてもよろしいかな」
ラルターフ 「地球はどちらから」
デイジー 「メドールです」
ラルターフ 「メドール」
デイジー 「メドールにいらしたことがおありなんですか?」
ラルターフ 「おお、これは失礼」
  「メドールはクラシックなよい都だ。人間がすむにはあのようなところが理想かもしれませんな。
しかし、あなたのような若いご婦人がなぜまたダムシティなぞに」
デイジー 「会いたい人がいるんです。ダムシティにいると聞きましたので、それで」
ラルターフ 「ほう、地球人のあなたがこんな辺境の地に」
  「いや、私もダムシティで会いたい若者たちがいるんだ。ひとりはあなたと同じメドール出身の若者だ」
デイジー 「メドールの?」
ラルターフ 「私はあの若者たちに夢を見ておるんです。私自身の夢を」
ラルターフ 「私はこの列車に従軍記者として乗っとるんです。縁があったら彼の地でまたお会いしたいですな。じゃ」

(アイキャッチ)

フェスタ 「おい、ロッキー、あとどのくらいだ」
ロッキー 「5分たらずだ」
フェスタ 「おてんとさまは真上だぜ。くそ熱いなもう」
ビリー 「作戦終えたらはやく帰っていつもの店でビールをぐーっとやろうぜ」
フェスタ 「ナマいうんじゃねえよ未成年が」
キャナリー 「フフッ。とりあえずはクーラーにコーヒーが入ってるわよ」
フェスタ 「そいつはありがてえ」
  ところでよ、俺がほんとに心配してんのはよ、チコの頭なんだよな。なんせ直(じか)だからよ」
チコ 「だいじょうぶだ、慣れてるからな」
ロッキー 「時間だ。みんな、いまから行動開始まで交信停止だ。いいな!」
  「ん?」
  「よーし万全だ」
  「ん!?」
  「ふう、先乗り先行車両だ。あんなものをぶっとばしたところでなんにもならない。さっさと行っちまってくれ」
  「!」
  「止まるぞ!?爆薬が発見されたのか」
兵士 「よっと」
ロッキー 「ぷっ」
兵士 「よいしょ」
ロッキー 「ふふふふ、ははははは」
  「おっ」

ラルターフ 「ふう、くそ暑いな。わしゃ汗っかきだからたまらん」
兵士 「ブンヤさんもよ、地球で芸能記者でもやってればラクでいいのによ」
ラルターフ 「わしゃそんな虚飾に満ちた世界なぞ興味はない。わしの知りたいのは人間の真実と可能性だ」
兵士 「よく言うぜ。ここにあるのはよ、バカ暑さと人殺しごっこだけだぜ!」
兵士たち 「ハハハハハハ!」
兵士 「ブンヤさんが見られるのは、アホらしさと絶望だけよ!」
ラルターフ 「ノーノーノーノー、断固ノーだ。わしゃこのデロイアにこそわしの知りたい人間の真実と人類の未来を見にきたんじゃ!
見てやる、そして書いてやる!わしゃ信じとるんじゃ」
兵士たち 「ハハハハハハハハ!」

兵士たち 「うわっ」

ロッキー 「出番だぞ。チコ!クリン!」
チコ 「そらよっ」
  「あらったったっ!」
ロッキー 「おっ」

ロッキー 「くそっ」
フェスタ 「えーいっ!」
  「ロッキー!大丈夫か!」
  「おっ、先行車両が引き返してきやがったか。ビリー、うまくしとめろよ!」
ビリー 「やった!」
  「ん?ああっ」

ミゲロ 「SOSをキャッチした!これより潜伏飛行で目標に向かう。5分後に敵に接触する」

ロッキー 「はやくしろ!新手がくるぞ!」
キャナリー 「敵機発見!距離13キロ。2分後に接触するわ」
  「ああっ、消えたわ!」
フェスタ 「なんでえ!いったいどういうこったい」
キャナリー 「…」
フェスタ 「ロッキー!」
ロッキー 「いいから急げ!」
クリン 「おっ!?左1200から敵だぞ!?」
  「やばい!谷を超低空で来たんだ!」
  「うわーっ!」
  「うわあーっ!」
ミゲロ 「デューイ戦闘ヘリは、谷場上のゲリラを殲滅せよ!ソルティック隊は谷に降下、ダグラムを倒せ!
わが管制ヘリは上空1,000にとどまり、適時戦闘を指揮する!」

ロッキー 「くっそー。クリン!聞こえるか?無事か!」
クリン 「今のところはね。これからはちょっと自信持たないけど」
  「キャナリー!リニアガンを撃ち出してくれ!飛び道具なしじゃまったく相手にならない!」
キャナリー 「方角は?」
クリン 「まっすぐでいい!真下にいる!」
キャナリー 「了解」
クリン 「装備の違いを思い知らせてやるぞ!」
クリン 「どうだ!」

チコ 「このやろう!」
  「おおーっ」
ロッキー 「アホかお前!まっ正面からやったら命がいくつあっても足りないぞ!無茶するな!」
  「ヘリコは俺に任せとけ!おまえはクリンの援護に回ってくれ!」
チコ 「へっ、わかった!」

小隊長 「よーしダブト絶対離すな!ガブル!ガブル!奴の装甲板は厚い。その距離では絶対貫通できん。至近距離で撃て!」
クリン 「えーい放せ!放せー!」
チコ 「最大パワーだ、一発で決まれよ!」
  「あらあらっ」
クリン 「チコ!ようし!」

ナナシ 「うえーい…だなッス」

ミゲル 「2進級はおあずけか。よし基地に帰るぞ!」

クリン 「へーイ!逃げてった、逃げてった!」
  「チコ!」
チコ 「んー?」
クリン 「さっきは助かったよ!」
チコ 「お互い様よ!」
  「誰だ!?手をあげて出て来い!」
ラルターフ 「わしだわしだ!」
チコ 「おーっブンヤさん!こんなとこでなにしてんの!」
ラルターフ 「ダムシティに行けば君たちに会えるとおもってな。軍用列車に便乗したんだが、ドカーンと来て、気がついたら諸君らがいたってわけだ。ワハハハハハハ」」

キャナリー 「作戦は成功よ。早いとこ知らせてやってね」
  「気をつけて。それっ」
ラルターフ 「この動乱で伝書鳩が長距離通信の最良策とは皮肉な星じゃな」
  「そういえばこの先の駅で君と同じメドール出身の娘さんにあったよ」
クリン 「えっ?」
ラルターフ 「うーん、年のころも君と同じくらいだったな」

駅員 「娘さん!今入った連絡によりますとダムシティへの便は当分出ませんぞ」
デイジー 「ええっ?」
駅員 「この30キロ先の赤い谷でゲリラの破壊工作があったんじゃ。いやあ考えようによってはあんた運がええかもしれんぞ。あんな町にいったらそれこそ…」
デイジー 「クリン…」

フォン 「…」
ラコック 「大佐、どうやら作戦は失敗のようですな」
  「そう深刻になることはありませんよ。私はもう慣れました」

ドナン 「うんうん、そうか。わかった」
ラコック 「獅子の子はやはり獅子ということですな」

ドナン 「クリン、邪魔をせんでくれ。時間がないのだよ、時間が」

(歌)

「西だ東だ南だ北だトンナンシャーペイ右左 犬が西向きゃ尾は東 回り全部が敵ばかり」

(Na)走る青春が、待つ青春が、追う青春が、泣く青春が…
数知れぬ青春が駆けぬけて行った。
炎の時は過ぎてしまったが、物語は語り継がれねばならない。永遠に…
Not justice,I want to get truth.

次回予告

荒野に朽ちる鉄の戦士は何故か。 風を追う少女は誰か。
狼のごとく心飢える青春が、獅子のように雄々しい青春がデロイアの大地を走る。
物語は一発の銃声で始まった。
次回「始まりの銃声」
Not justice, I want to get truth. 真実は見えるか。