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真実はみえるか。

#11 遠すぎた父

ドナン 「ああ大佐かね、私だ。どうだね、その後の動きは」
  「いや私に遠慮せんでもいい。ダグラムを撃破することが先決だ。では一時間後に会議室で会おう」
  「ばかなやつだ」

(Na)「遠すぎた父」

ガルシア 「クリン・カシムを?」
フォン 「そうだ。彼だけは生け捕りにしろ」
ガルシア 「やつだけ特別扱いにしろというのか」
フォン 「そうだ。彼を殺したら後が面倒だ。必ず生きたまま連れ帰るのだ。いいな」
ガルシア 「特別手当ははずんでくれるんだろうな」
フォン 「つけあがるな。これも約束した報酬のうちに入ってるはずだぞ」

ガルシア 「くっ、ブタめ」
  「息子を助けて、ドナン・カシムに恩を売ろうとしておるわい」
オッペ 「面倒なことを言ってきましたな」
ガルシア 「ほっとけぱいい。撃ち殺したって向かってきたからといえばそれまでだ」

ガルシア隊兵士 「隊長、思ったとおり奴らのキャンプの後だ。夕べここに泊まったらしいですぜ」
ガルシア 「へっ、食料にはまだ不自由していないようだな。まだ遠くへは行ってはいまい。出発するぞ」
オッペ 「しゅっぱーつ!」

ヘリパイロット 「曹長、どこにも人影なしだ。猫の小子一匹見あたらない」
ダーク 「目ん玉開けてよく探してみろ。岩の陰にへばりついちゃいねえか」
ヘリパイロット 「存外やつらはガルシアの方かもしれないな、曹長。はあ」
ダーク 「いいからさがせ!連中を頼りにするほど、おれたちはまだ落ちぶれちゃいねえんだ」
ヘリパイロット 「へいへい。我々もはやく落ちぶれちゃったら楽なのにね隊長」
ダーク 「つべこべ言わずに探せったら探せ!」
ヘリパイロット 「うーこわ」

ナナシ 「せーの、よいしょ」
ロッキー 「もっとしっかり押せ」

ロッキー 「くそったれ」
  「ダメだダメだ。ぶっ壊れちまったい」
ナナシ、クリン、チコ 「ええ?」
ロッキー 「ケホ、ケホケホケホ、ケホケホ。まいったな」
フェスタ 「ざまあないぜ。ポンコツ買うからよ」
チコ 「どいてみな。あっちちちちちち!」

デスタン 「どうした」
  「なんとかなりそうか。早く修理してくれ。一刻も早くボナールに行かなければならん」
ロッキー 「あたりまえのことをいうなよ
フェスタ 「十のガキにだってわかるぜ」
ロッキー 「どのくらいかかりそうだ」
チコ 「あ?なおるまでだよ」
ロッキー 「フフフフ」
  「まあ、ガルシアに追いつかれないよう祈ろうぜ」

一同 「!」

ビリー 「ナナシー!昼飯だよー」
ナナシ 「だははー」
ロッキー 「やるじゃないか、ビリー」
クリン 「ロッキー」
ロッキー 「ん?」
クリン 「俺に時間をくれないか。父さんに会ってきたい」
ロッキー 「親父に?親父に会ってどうする気だいまさら」
キャナリー 「逃げ出す気なのよ。しょせんは地球人だもの。あたしたちのために流す血なんか持ち合わせてないのよ、フン」
クリン 「違う!俺は、そのためにも、もう一度父さんに会っておきたいんだ」
ロッキー 「いけばとっつかまるぜ。おまえはやつらから見れば裏切者だからな」
クリン 「わかってる。それでも俺は父さんに会っておきたい。俺自身に決着をつけるためにも。必ず、日暮れまでに戻ってくる」
フェスタ 「ヘン、どうだかねえ。今は裏切り者でも、俺達の居場所を教えて帳消しってこともあるしな」
キャナリー 「いいじゃない、いかしてあげなさいよ。あたしは戻ってきてくれなくてけっこうよ。せいせいするわ」
クリン 「…」
キャナリー 「フン!」

デスタン 「君を行かせるわけにはいかん。我々を裏切らないという保証はどこにもない。それに君はいまのところダグラムの唯一のパイロットだからな
ロッキー 「いかしてやんな、デスタンさん」
デスタン 「リ、リーダーは私だぞ。私がダメといったらダメだ」
ロッキー 「だから頼んでんだろリーダーさん。クリンは裏切りやしないよ。俺の命をかけてもいい」
  「つまりだな、冷静に考えてみろ、クリンが逃げ出す気なら黙って消えちまえばいい。その気になればダグラムで俺達を皆殺しにだってできるさ」
デスタン 「し、しかしだな、出かけてる留守中にもし敵に発見されたらどうする」
ロッキー 「決まってるじゃねえか、クリンなしで戦うしかねえだろ。そういうときのためにもあんたがいるんじゃねえかリーダーさん」
フェスタ 「へっへへへへへ、そりゃたしかにそうだ」
クリン 「すまない、ロッキー」
ロッキー 「いいってことよ。そのかわり早く帰ってこいよ」

ロッキー 「必ず戻ってくるさ。親父のそばにいられるくらいなら俺達と一緒にここまでやってきやしねえよ」

アナウンス 「北極ポート発、NS207便到着いたします。出発のご案内を申し上げます。カーディナル発、ワームホール直行便NS507便は、定刻どおりの出発でございます」

タクシー運転手 「ゲリラを警戒してるんでさあ」
デイジー 「ゲリラ」

デイジー 「こわくはないわ。ここにクリンがいるんだもの」

衛兵 「身分証明書を」
デイジー 「あたし、地球からきました。クリン・カシムに会いに来たんです」
衛兵 「えっ」

女憲兵 「ドアをしめなさい」
デイジー 「あの、クリン・カシムは」
女憲兵 「服を脱いで」
デイジー 「えっ、どういうことなんです。あたしはただクリンに会いに」
女憲兵 「服を脱ぎなさい」
デイジー 「は、はい」
女憲兵 「靴も」
  よろしい、後は支配人の指示にしたがいなさい

ロッキー 「おいチコ、エンジンの調子はどうだ」
チコ 「まるっきりだ」
ロッキー 「はやく食べねえと肉がなくなっちまうぞ」
チコ 「わかってるよ」
デスタン 「おかわりをたのむ」
「はいよ」
デスタン 「エンジンはまだなおらんのか」
チコ 「まだまだ」
デスタン 「なにを手間取っているんだ」
ロッキー 「やつは飯も食わずにやってるんだぜリーダーさんよ」
ナナシ 「だなっせ」

支配人 「ゲリラとのつながりがあるかどうか調べられたのですよ」
デイジー 「ゲリラ?でもクリンとは何も関係はないんでしょ」
支配人 「それがですね、かれはいまゲリラ分子として連邦軍の追跡を受けて逃亡中なんですよ」
デイジー 「ええっ」

支配人 「とにかく、しばらく休んだ方がよろしいでしょう。私はこれで。何かありましたら私はフロントの方にいますから」
デイジー 「ああっ…」
デイジー 「そんな、クリンがゲリラだなんて」

デイジー 「はあ」
  「胎動期のデロイア独立運動、ゲリラ狩り続く。フォンシュタイン政権の欺まん性をつく…」
  「あっ」
レーク 「今のデロイアはその新聞に書かれているとおりだ。クリンはそれに巻き込まれた」
  「いつものやつを頼む」
ウェイター 「はっ、かしこまりました」
レーク 「士官学校も除籍処分になってしまった」
  「クリンが好きか」
デイジー 「えっ」
レーク 「クリンに会いたい、それだけの理由でここに来たんだろ。愛しているのかクリンを」
デイジー 「えっ、愛?愛している?あたしが?クリンを?」

 

デイジー(回想) あたし、クリンのこと知りたいの。もっともっと。
クリン(回想) 「えっ?」

デイジー そう、愛している。クリンを
レーク 「気がつかなかったのか。さっきの電話で泣いていたろ。そんな年頃だな。フフフ、私らにもそんなころがあったな。行こうか」
デイジー ええ

(アイキャッチ)

レーク 「ラルターフといってさっきの記事を書いた男だ。彼ならクリンの行方をつかんでいるかもしれない」
レーク 「オレにはもうどうにもできん。クリンの追跡部隊から外され、毎日ひまつぶしだ。軍人としては補佐官殿にあまく見られたらしい」

レーク 「ここだ。いるといいがな」

チコ 「おーい直ったぞー」

チコ ふう

デスタン 「直ったのか、よくやった。出発の用意をしとけ!」
チコ 「さて飯だ飯だ。オレの分とってあるだろうな」
ロッキー 「ああ、とってあるとも」
キャナリー 「はっ」
  「うわーっ」

ロッキー 「みんな!武器を持って岩陰に隠れろ!」

チコ 「まだ食っちゃいないんだぞ」
キャナリー 「はっ」

ガルシア 「正規軍の鼻を明かしてやれ。我が隊だけでカタをつけるんだ」

ラコック 「閣下、先ほどガルシア隊がゲリラと接触したと連絡が入りました」
ドナン 「例によってダグラムにまた手こずっているのではないのか」
ラコック 「今度はなんとかカタが着くとはいってはおりますけれども」
ドナン 「どうかな」
ラコック 「デイジーさんに着いては二三日中に地球に送り返した方が」

ドナン 「問題は自治法発布のタイミングだ」
ラコック 「はい」
ドナン 「ん?」
  「ク、クリン!おまえは」
  「わしはなにもいわん。これからすぐデイジーと一緒に地球に帰れ。ラコックが手配してくれる」
クリン 「デイジー…デイジーが来てるんですか」
ドナン 「おまえを訪ねてきている。一緒に帰るんだ」
クリン 「父さんの返事次第によっては帰ります」
ドナン 「わしの?」
クリン 「ええ、父さん。僕はそれを聞くために戻ってきたんです」
ドナン 「なんのことだ」
クリン 「そ、それは…わかっているはずだ、父さんにだって。お願いです。サマリン博士を釈放してデロイアの独立を認めてやってください」
ドナン 「フン、甘いな。安っぽい同情で政治を動かせるとでも思っているのか」
クリン 「そんなんじゃない。デロイアの独立さえ認めれば、今の争いはなくなるはずです」
ドナン 「認めん」
  「独立は認めんし妥協する気もさらさらない」
クリン 「…」
ドナン 「いいかクリン。デロイア人も地球人も同じ仲間だ」
クリン 「デロイア人は同じ仲間だと思っていません」
ドナン 「思っていないのは少数の跳ね上がった連中だけだ」
クリン 「違います。ほとんどのデロイア人がそう願っています」
ドナン 「一部の連中だ。おまえはやつらに利用されているんだ」
クリン 「利用されてなんかいない」
  「!」
ドナン 「うまく利用されているだけだ!いいかよく聞け、わしはデロイアの独立を認める気も、やつらと手を結ぶ気もさらさらない。地球人類のためにいずれは完膚なきまでにたたきつぶすつもりでいる」
クリン 「と、父さんは」
ドナン 「これ以上私を怒らせるな!たった今この場から地球に戻れ!」
  「ラコック、クリンをエアポートに送ってやれ」
クリン 「さよなら父さん。今度こそ、今度こそ本当にさよならだ!」
  「!」

ドナン 「クリン待て」
  「憲兵隊!クリンを逮捕しろ。絶対に逃がすな!」
兵士 「はっ」
ラコック 「裏の林だ、急げ。そうだ。閣下の命令だ。必ず逮捕しろ」

兵士 「止まれーっ」
兵士 「止まれーっ!止まらんと撃つぞ!」
兵士 「うわっ」

兵士 「うわーっ」
兵士 「クリン・カシム、おとなしく投降しろ!通りは完全に包囲した!」
デイジー 「クリン、クリン!クリーン!」
クリン 「デイジー」
デイジー 「クリン!」
  「あ、あっ」
クリン 「デイジー」
デイジー 「クリン、おうちのかたみなさん心配してるわよ、お母様も」
クリン 「…」
デイジー 「帰って。あたしと一緒に」

デイジー 「お願いクリン、帰りましょ。あたし」
クリン 「デイジー、きれいになったな。少し見ないあいだに」
デイジー えっ
クリン 「キミは…あっ」
レーク 「クリン、悪いようにはせん。おとなしく投降しろ。デイジーと一緒に地球に帰るんだ」
クリン 「デイジー、また会おう」
デイジー 「クリン」

兵士 「うわっ」
兵士 「止まれ!止まらんと撃つぞ」

デイジー 「クリン、愛してるわ!」
クリン 「!」

兵士 「うわっ」
レーク 「クリン!」
デイジー 「クリン!」

ラコック 「なぜ射殺しなかった」
兵士 「えっ、し、しかし」
ラコック 「今は幼くても獅子の子は獅子」

ロッキー 「くそっ、こんな武器だけじゃどうにもならねえや」
デスタン 「こういうことが予想されたから私は、クリンを行かせたくなかったんだ。釘付けにされて、どうやってここから脱出するつもりだ」
ロッキー 「それを考えるのがリーダーさんってもんだろ」
  「うわっ」
チコ 「くっ」
  「くそー、ダグラムが動かなきゃどうしようもねえ」
キャナリー 「クリンは必ず戻ってくるなんて言ったのは、だれよ
ロッキー 「クリンは必ず戻ってくる」
キャナリー 「甘いのよ考えが」
  「!」
ビリー 「後ろにも回られちゃったぜ」
ロッキー 「戻ってくる!うっ」

ガルシア 「ダグラムだけ手に入れればいい。ゲリラどもはバーべキューにしろ。一人残らず丸焼きにしてしまえ」

ゲリラ 「うわーっ」
チコ 「ぐわーっ、ぶっ飛ばしてやる」

キャナリー 「あっ」

ガルシア 「うははははは 燃えろ、燃えろ。飛び出してきたやつはかたっぱしから射殺してやるわ」

クリン 「なんとか持ちこたえていてくれ」

ビリー 「ロッキーもうだめだ、このままじゃ黒焦げになるだけだ。降りられる場所見つけようぜ」
ロッキー 「うまく抜け出しても撃ち殺されるだけだ」
ビリー 「正義の味方が簡単にやられてたまるか。しゃあねえ、このまま待とう。クリンは必ず来るさ」

クリン 「はっ」

兵士 「なんだと」

ガルシア 「なに!た、立った。ダグラムが。なぜ今ごろ… 罠か!サントス後ろだ、気をつけろ!

サントス 「!」

サントス 「うわーっ」

ロッキー 「クリンか」

兵士 「うわーっ」
クリン 「遅い!」

クリン 「ロッキー」

ガルシア 「ひとまず退却だ。退却しろ!くそー、はめられたか。ソルティック隊に連絡を取れ!」

ビリー 「あっ」
フェスタ 「クリン」
ロッキー 「クリン!ほれ見ろ、来ただろうが」
キャナリー 「フン、もう少し遅ければみんな死んでたわよ」
クリン 「みんな、だいじょぶか」

ナナシ 「だなっす」
フェスタ 「このとおりよ」

ナナシ 「よくかえってきたっす」
ビリー 「クリン」
一同 「ははははは」

次回予告

別れの言葉はいらない。もう引き返さないと誓ったのだから。ダグラムのために、流された血のために戦わなければならない。撃たなければいけない。
クリンの震える指先が引き金に触れる。
次回、「ためらいの照準」
Not even justice, I want to get truth. 真実は見えるか。

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