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真実はみえるか。

#6 暁の救出作戦

(Na)反乱軍に捕らえられた連邦評議会のメンバーを救出するため、首都カーディナルに向かった連邦軍別働隊は、反乱軍の包囲を突破。思わぬ活躍をしたクリンを隊列に加えて進み、首都カーディナルを一望に見わたせる北8キロの地点バーディング・ヒルへと迫った。

レーク 「うむ…」

(Na)「暁の救出作戦」

茶色の髪の男 「よし、いこう」
薄い茶色の髪の男 「ああ」
  「ん?」

レーク 「兵士の数は一個中隊くらいいるのか」
茶色の髪の男 「はっ、2、300ってとこです。中洲の議事堂に通じる4か所の橋を固めている兵士が約200。議事堂には100くらいと思われます」
レーク 「コンバットアーマーの数は」
茶色の髪の男 「はっ、各ブリッジにそれぞれ1機ずつ。ただ我々が首都圏に侵入したことが知れ渡っていますから、あと2,3機が増援される可能性は大です」
レーク 「ご苦労だった。みんなを集めよう」
茶色の髪の男 「はい」
「 …」
「いやーあつい」

レーク 「作戦を指示する。よく聞いてくれ。代表メンバー12名が監禁されているのはこの議事堂の内部と断定する。救出作戦だが、まず夜を待ってレインジャー隊員10名が川に入り、この地点から上陸、背後をかく乱する。このときだいじなことは、この橋4箇所のかく乱を同時刻にやることだ。
グラッシン、君が指揮をとれ」
グラッシン) 「はい」
レーク 「その時間に合わせてコンバットアーマー4機が出撃。橋を一つづつ受け持つ。ダーク、こっちは君が指揮を執ってくれ」
グラッシン 「はい」
レーク 「グラッシン、君たちはその混乱に乗じて一気に建物に突入しろ。いいな、やり直しはきかんぞ」
グラッシン 「わかりました」
レーク 「もうひとつ。作戦が開始されたら一切の交信を中止する。以上だ。では作戦開始まで十分に休養を取ってお…」
  「!? 」
グラッシン 「あれは…敵のパトロールヘリです」
レーク 「かくれろ!」
「ようし、だいじょうぶだ」

ラルターフ 「どうしても引っかかるんですがねえ。捕われている要人が議事堂にいるという根拠ですよ」
ラコック 「そのことでしたら、もう説明したはずですが」
ラルターフ 「コンピュータ試算ですか」
ラコック 「それだけではありません。私が脱出するとき、反乱軍が上へ連れて行けと叫んでいるのを聞いています。失礼」
ラルターフ 「だったらそれはそういうことにしておきましょう」
ラコック 「ひとつお聞きしますが、あなたはなぜそのことにこだわるんですか」
ラルターフ 「反乱軍を指揮しているのがフォン・シュタインという男だからですよ」
ラコック 「どういう意味です、それは」
ラルターフ 「あの男は地球の士官学校を出ただけではなく、そのほとんどを地球ですごしている。めぐまれた環境にいて財界にも顔が広い。そんな経歴の男が本気で独立運動なんか起こす気になるかね。それも先頭に立ってだ」
ラコック 「どんな男が指揮しようが、反乱軍が存在している、それだけは事実ですよ」
ラルターフ 「それにしてもどうも連邦軍の狙いどおりにコトが進んでいる気がして仕方がない。そうは思わんかね」
ラコック 「人が不幸にあっているときでもそういうことを考えていられるあなたという人間を私は尊敬します」

ダーク 「ぼうや」
クリン 「コックピットを点検しておきます」
ダーク 「ちょっときな」
クリン 「はい」
「なんですか」
ダーク 「この仕事で飯を食っている連中がいるんだ。じゃましないでおくんだな」
クリン 「えっ」
べリオン 「やっこさんたちにきらわれたら、コンバットアーマーひとつ満足に動かせねえぞ。そんなこともしらねえのか ん?」
クリン 「ぼくはただ…」
ダーク 「ごろっとしてコーヒーでも飲んでな」
ブルーム 「ミルクの方がいいんじゃねえか」
べリオン、ブルーム 「ははははは」
クリン 「わかりました!」

フォン 「デロイアを思う諸君、われわれは六日間待った。しかし地球側は何の返答も出していない。これ以上もう待てない。本日デロイア時間12時までに返答がない場合は人質全員を処刑する。私は声を高らかにいいたい。我々はもう待てない」
兵士 「大佐どの」
フォン 「どうだ、お客様の様子は」
兵士 「はっ、いまの放送で進展を見せるでしょう」
フォン 「 そうだな、彼らもバカではないはずだ」

評議員A 「ダメだ!デロイアの独立派絶対に認められん」
評議員B 「何度議論しても同じだ」
評議員C 「ミスター・カシム、あなたも意見は変わりませんか」
ドナン 「かわらん。独立は認められん」
評議員D 「なぜなんだ。地球の将来を考えたら独立させるのが最善だ。開拓時代とはわけがちがう。いまや歴史の必然だ」
評議員C 「私たち五人は同じ意見です。デロイアとの関係を正常なものにして、相互利益を図る時代に来ている。そういう認識です」
ドナン 「君たちは歴史を間違ってとらえておる。デロイアは今、まがりなりにも連邦の一員だ。
そして地球はこのデロイアに食料・資源の40%を依存している。だが独立を認めたらどうなる。一人ではできないケンカも二人になればできる。必ず利害が生じ戦争になる。これこそが歴史の必然だ」
評議員C 「だからこそ今のうちに手を打ち、友好関係を作っておくべきです」
評議員D 「彼らが独立を願うなら認める。それこそが友好関係を作る第一歩だ」
ドナン 「独立を認めたとしてだ、デロイアが地球に対して国交を断絶したらどうなる」
評議員C 「そんなバカなことはしないでしょう」
ドナン 「しないとどうしていえる。理性じゃあない、デロイア人が地球にいだいている感情だよ。理性ではなく感情がしばしば歴史を変えるのだよ」

兵士 「失礼します。待機している本隊にこちらの行動時刻をすべて暗号で伝えておきました」
レーク 「よし」

レーク 「まて」

ラルターフ 「いやあ、ちょっとお邪魔しますよ」
ラコック 「おやおや。今度はなんです」
ラルターフ 「たばこはありませんかな」
レーク 「ああ、どうぞ」
ラルターフ 「作戦がむだにならなければいいんですがね」
レーク 「成功させるだけさ」
ラルターフ 「そういのります」

クリン 「やっぱりおしっこしとこ」

評議員D 「タイムリミットだ。どうする」
評議員C 「カシム議長、どうします」
ドナン 「わかった。独立を認めるということでフォンシュタイン大佐にあってくる」

レーク 「時間だ。発進せよ!」
ダーク 「いくか」
「ぼうや、まちがえるなよ。おまえさんは東のブリッジだ」
クリン 「は、はい!」
べリオン 「まちがってもおれたちをうつなよ」
クリン 「はい!」
ブルーム 「ぼうや」
「ま、気楽にいこうや」
ドナン 「あ」
「はい」

(アイキャッチ)

兵士 「敵だー!」
隊長 「離れるな!持ち場から離れるんじゃない」

グラッシン 「いくぞ」

ダーク 「飛行機じゃねぇんだ。効くか!」

クリン 「うわっ」
「ああ」
「うわーーーーっ」

隊長 「東の橋が手薄になってる、そっちへまわれ!」
兵士 「はっ」

評議員たち  「!」

フォン 「始まりましたな」
ドナン 「もう引き返せんぞ」

グラッシン 「いまだ、いくぞ」
兵士 「うわっ」

レーク 「議事堂内に侵入するのに成功したぞ。時間もほぼ予定していた通りだ」
「問題はこれから先だ。いればいいがね」
ラコック 「それももうすぐわかります」
レーク 「いきましょう」
「通信兵、本隊に打電。『別働隊、議事堂内侵入に成功、ただちに作戦を開始されたし』」

通信兵 「別働隊が内部突入に成功しました」
指揮官 「よし、一気に落とすぞ!」

クリン 「うおあーーーーー」
「あーーーー」
「やった、やった、やったぞ!」
ダーク 「ぼうや!どうした」
クリン 「やりましたー」
ダーク 「やるじゃないか。よし、あとはここでじっとしてるんだ。本隊が市内を完全制圧するまで、中洲を占拠して新手をおさえる。それが俺たちの任務だ。ほら始まったぞ」
クリン 「ここに? ここにいなきゃいけないんですか」
ダーク 「親父さんのことが気になる気持ちはわかる。でもこれは命令だ。もう一度言うが持ち場を離れるんじゃないぞ」
クリン 「あっ」

兵士 「!」
グラッシン 「いない、むこうをさがせ」
「ほかだ 」

クリン 「父さん」
「はっ、父さん」
ダーク 「そっちはどうだぼうや」
「おい、返事をせんかクリン・カシム」
「おいクリン返事をせんか。クリン!」

グラッシン 「あの部屋にまちがいない」
レンジャー 「どうします」
グラッシン 「一気に突っ込もう」
クリン 「とうさーん」
「とうさーん!」
グラッシン 「とまれ!」
クリン 「!」
「うわあーーーー」
兵士 「うわあ」
グラッシン 「こいつ」

ドナン 「やあレーク」
レーク 「これは一体どういうことなんです」
ドナン 「心配をかけてすまなかったな」
クリン 「父さん!」
ドナン 「ん?」
「レーク、きみに迷惑をかけたんだろう? 許してやってくれ」
ラコック 「閣下、これはどういうことなんですか」
評議員B(オレンジの髪) 「我々も聞きたいな」
ドナン 「彼はそこにいる評議会のメンバーに煽動されて反乱を起こしたんだ」
評議員(マホガニーの髪) 「えっ!?」
ドナン 「つまり利用されたんだ」
評議員一同 「嘘だ!」
評議員 「貴様!」
評議員 「何をいうんだ君は!」
評議員B(オレンジの髪) 「貴様、この男とどんな取引をしたんだ!」
「どあっ」
フォン 「連れて行け!」
評議員(マホガニーの髪) 「君って男は恐ろしい人間だ! き、きみっ」
ラコック 「それでは今回の反乱事件は、彼らが策謀したというのですか」
ドナン 「その通りだ。彼らはデロイアを独立させることで利権を得ようとしたのだ。そのために自分たちはまず議会でデロイアの独立を必ず承認させる。その一方で独立をたやすくさせるためには、まずデロイアで事を起こせと迫ったのだ」
フォン 「その通りだ。議長と話をするまでは恥ずかしい話そこまで考えているとは思わなかった。私が望んでいたのは独立ではなく、植民星になっているこのデロイアを地球の8番目の州として認めさせることだった。評議会に議席を得ることがデロイアの望みだったのだ。それを奴らに利用されたのだ。絶対に許せん行為だ」
ドナン 「私は連邦評議会の議長としてデロイアに対し深く謝罪すると同時に、州立化を承認する決定を下った。当面暫定運営となろうが、代表はもちろんデロイアを愛するフォンシュタイン大佐だ。ほかは認められん!」
ラルターフ 「ビッグニュースですな。これで私も一年は食える」
「ということは地球側の今度の事件に対する報復行動は一切ないということですね」
ドナン 「煽動した評議会の代表を極刑に処さないこと。またこちらも反乱軍に対し一切報復しないこと。それが条件だ」
ラルターフ 「じつに丸くおさまったもんだ」
ラコック 「君っ!」
ドナン 「ラコック」
ラコック 「はい」
ドナン 「今のメッセージを文書化して地球に送ってくれたまえ」
ラコック 「はっ、ただちに」

べリオン 「きさま、なんだって無断で持ち場を離れたんだ」
ダーク 「ぼうや、よかったな。おやじさんよろこんでくれただろ」
べリオン 「だが命令違反は命令違反だぞ」
ダーク 「さ、むこうでコーヒーでも飲もう」
ラルターフ 「妙にあっけなかったな」

(Na.)SC152 10月6日付をもって、連邦評議会はデロイアを8番目の州として承認した。

次回予告

デロイア州誕生、自治権確立。デロイアの動乱は理想的に収束したかに見えたが、権力の暗闇はゲリラを生んだ。流れる赤き血は大地を塗りかえることができるか。
次回『ゲリラ狩り』
Not even justice,I want to get truth.
真実は見えるか。

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