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真実はみえるか。

#2 始まりの銃声

【デロイア第8軍管区司令部】

【デロイア軍管区司令官ダンロック中将】

【デロイア軍管区参謀フォン・シュタイン大佐】

フォン 「閣下、ぜひご決意を。全デロイア人民は閣下の決起を熱望しております」
ダンロック 「無理をいわんでくれ大佐。私はもうこの歳だ、そのような情熱は残っとらんよ。それに自分の見るところではデロイアの客観情勢はそこまでは行っとらんと思う」
フォン 「事を起こせば、状況は後からついてまいります」
ダンロック 「大佐、このことは聞かなかったことにする。君も忘れろ」
フォン 「閣下!重ねてお願い申し上げます」
ダンロック 「大佐、くどいぞ」
フォン 「お聞き届け願えない時は、非常の手段をとらねばなりません」
ダンロック 「大佐、どうあってもというならこの老人を踏み越えていかねばならんぞ」
フォン 「やむを得ませんな」

(Na)一発の銃声が全ての始まりだった。SC152、デロイアは動乱の時を迎えようとしていた。

(Na)「始まりの銃声」

【SC152 地球】

暴走族A 「あーっ!」
暴走族B 「ざまあねえな、おい」
暴走族C 「おいおい」
暴走族A 「痛い、いた」

【ロッキー(デロイア人)】

ロッキー 「あーあ」
  「次!」
暴走族 「いいぞー」
  「いいよー」
ロッキー 「ん?」

【クリン・カシム】

ロッキー 「いつも見に来てるな」
  「見ていて面白いか?」
  「やってみるか?」
クリン 「え?」
ロッキー 「地球人に根性があればの話だがな」
暴走族 「へへへへ」
暴走族 「ほほーう」
暴走族 「根性て言葉を知ってるかい、ええ坊や」
フェスタ 「ロッキー、どうせやんなら板1枚増やそうぜ」
暴走族 「おーそりゃいいや、ハハハハハ」

ロッキー 「地球人にしちゃやるじゃないか」

【カシム邸】

モレア 「ドナン、それで明日は何時に発つ」
ドナン 「朝の10時だ」
モレア 「向こうへはどのくらい行ってるんだ?」
ドナン 「予定は20日間だ」
サラ 「お父様」
ドナン 「ん?」
サラ 「デロイアはむし暑いから着替えはたくさん持っていったほうがよくてよ」
ドナン 「はっはっはっは」
フィナ 「そういえばレークさんは向こうが長かったわね」

【長男 ラビン・カシム】

ラビン 「ああ。連邦会議を今回デロイアで開くっていうのは実に効果的ですよ」

【次男 ロイル・カシム】

ロイル 「デロイアはどこまでいっても地球の殖民星なんだ。そのことをデロイア人に再認識させといたほうがいい」
サラ 「向こうで開くっていうのはそういうことなの」
ラビン 「むろんだ」
ロイル 「近ごろのデロイア人の思い上がりは目に余るな」
ラビン 「地球の支配下にあるってことを思い知るべきだ。ねえお父さん」

【父 ドナン・カシム】

ドナン 「これだけは言っておく。おまえたちがデロイアをどう思おうと、いまや地球経済はデロイア抜きには成り立たないことをな」
モレア 「それにしてもデロイア資本は強くなりすぎたな、ドナン」
「ああ、その通りだ。なんとかせにゃならんな。このままでは…」
ラコック 「閣下。あの」
ドナン 「ん」
ラコック 「お電話です」
ドナン 「諸君、ちょっと失礼する」

ドナン 「うんうん、うん。そりゃよかった、ありがたい」
  「コホードも会議出席に同意したぞ」
ラコック 「これで地球連邦すべての出席をとりつけることが出来ました」
ドナン 「うむ」
ラコック 「ああ、申し遅れましたが、総理も明日は見送りにみえるそうです」
ドナン 「うむ。よかった。全員の出席をとりつけられるとは思わなかった」

サラ 「デイジー、クリンのことが気になるの?」
デイジー 「!」
  「いいえ…」
レーク 「はっはっはっは、顔が赤くなってるよ、デイジー」
  「ああ、こらこらどうした。ケンカはだめだぞ」
  「それにしても遅いな、クリンくんは」

「おいら誰の子 (聞き取り不明)この子地球の子 帰ってきたんだママ 抱いておくれよパパ
ちからやさしい笑顔を見せて わすれ(聞き取り不明)ママ 覚えてないのかパパ (聞き取り不明)」

ロッキー 「オレはロッキーだ。おまえは?」
クリン 「クリン・カ…」
  「あ…」
  「クリンっていうんだ」
フェスタ 「オレはフェスタだ」
クリン 「よろしく」
ビゲル 「ビゲルだ」
アナレッグ 「アナレッグだ」
ショッパー 「ショッパーだ」
タックル 「タックル」
クリン 「よろしく」
ビリー 「おいらビリーだい」
チコ 「チコだ」
ナナシ 「おいら…おいら、その…」
チコ 「こいつは名無しってんだ」
ナナシ 「なはははは…だなッス」
クリン 「よろしく」
ロッキー 「地球人にしちゃいい根性してるぜ」
ビリー 「これから街に繰り出さないか」
ナナシ 「そーだなッス!」
ロッキー 「そーすっか!」
フェスタ 「よーし決まった!」
ビリー 「もち付き合うだろ、クリン」
クリン 「ああ」

暴走族 「おい!」
暴走族 「なんだなんだい」
ロッキー 「誰だ!」
覆面の男たち 「出てけ!デロイアの豚野郎!」
  「ここは地球だ、おまえたちデロイア人の来るところじゃない」
  「出て行かなきゃ、腕づくでたたき出してやるぞ!」
フェスタ 「冗談じゃねえや!やれるもんならやってみろ!」
覆面の男たち 「やっちまえ!」

  「うわっ」
  「うっ」
チコ 「うるせえんだよ」
ナナシ 「わーだなッス」
クリン 「うおっ」
  「!」
  「それ」
覆面の男 「う、うおーっ」
クリン 「うおっ」
ロッキー 「逃げろーっ!」
チコ 「ビリー!」
ビリー 「それーっ」

クリン 「…」
  「!」
バスク 「気がついたかい」
  「デロイア人を君が差別してないところは、さすがドナン・カシムの息子だな」
クリン 「!」
バスク 「君のことはよく知ってるよ」
クリン 「あなたは」
バスク 「名前はバスク。デロイア人だ。散歩の途中で今の騒動に出くわしてね」
  「でも、君と話ができてうれしいよ。ぼくはドナン・カシムを尊敬しているんだ」
クリン 「尊敬」
バスク 「君は?」
クリン 「あなたとは違うかもしれないけど、好きだ」
バスク 「当然だよ。ドナン・カシムは立派な人だ。さっきのケンカじゃないが、ギクシャクしている地球とデロイアの関係をなおしてくれるのは君の父上しかいない」
  「明日、できるなら見送りに行きたいな。手を振るだけでもいい。でも僕たち一般人じゃ空港には立ち入り禁止でダメか。
見送りたいっていうのはね、名もないデロイア人でも、地球の政治家に期待している人間がいるってことを知ってもらいたいからなんだよ」

ロイル 「はっはっはっは」
フィナ 「うふふ」
こども 「やーん…」
女性 「まあ。ほほほほ」
デイジー 「うふふっ」
  「あ…」
サラ 「クリン!」
  「遅かったじゃないのクリン」
クリン 「こんばんは」
サラ 「どうしたの?ケガしてるじゃないの」
クリン 「ちょっと転んじゃってね…おっと」
クリン 「レーク兄さん、いらっしゃい」
レーク 「やあ、元気かい」
デイジー 「クリン…」
クリン 「こんばんは」
クリン 「こんばんはモレアさん」
クリン 「兄さん、父さんは」
ロイル 「明日が早いから上で休んでる」
  「どうしたんだいまごろ。ん?」

クリン 「ふう」
クリン 「父さんはベッド?」
ラコック 「いいえ、まだです」
クリン 「そう」

ドナン 「だれだ」
クリン 「父さん、入っていい?」
ドナン 「おおクリンか。どうした」
クリン 「父さん、今日は食事に出なくてごめんなさい」
ドナン 「そんなことはいい。ん?」
  「どうした、ケガをしているではないか」
クリン 「ちょっとバイクで転んだんだ」
ドナン 「何をしてもいいが母さんには心配かけるなよ」
クリン 「うん。じゃ、明日早いから」
ドナン 「ああ」
クリン 「おやすみなさい」
ドナン 「おやすみ」
クリン 「あしたは見送りに行くよ。みんなとは一緒じゃないかもしれないけど」
ドナン 「ハハッ」

(アイキャッチ)

【メドール州空軍基地】

ドナン 「さて諸君、私に何を語らせようというのかな。婚約発表ならもうとっくにすませたはずだよ」
記者達 「はははは」
記者 「連邦評議会をデロイアで開く本当の狙いはなんですか?
評議員を持たないデロイアで連邦会議が開かれるなんて、かつてはなかったことですよ」
ドナン 「いろいろ取りざたされておるようだが、私としては当然のことと思っておる。つまり、デロイアも地球連邦の一員だという認識を新たにするとでも言おうか。ま、とにかくデロイアで連邦会議が開かれなかったのは未開拓時代からひきずっておった単なる慣習にすぎん。慣習というのはときにおいて破られるもんだよ」
記者 「デロイアの独立の機運に対するけん制という声もありますが」
ドナン 「そのような側面はまったくない」
ドナン 「おお」
  「やあ総理、忙しいところをわざわざすまんですな」
  「さて、総理もいらしたことだ、つまらん詮索はやめにして、内政についての質問なぞを展開してはどうかね」
総理 「ははははは、諸君、だいぶドナンをいじめたらしいな」
記者団 「ははははは…」
記者 「それでは総理にお伺いしますが、デロイア連邦評議会の一番の意味は…」

レーク 「お父さん、新聞記者たちにだいぶ食い下がられておりますな」
ラビン 「連中のしつこさには泣かされるよ」
ロイル 「いつも世論の代表者ヅラには辟易する」
モレア 「しかし時には役に立つものですぞ、マスコミというものは」
女性 「男と生まれても政治家にはなりたくないものね」
サラ 「お母さま、クリンは?来ているんでしょ」
フィナ 「ええ。デイジーに今さがしにいってもらっているわ」
ロイル 「ここにいればいいんだ。落ち着かんやつだな」
ラビン 「カシム家の恥だ、あいつは」
フィナ 「そんな言い方はしないでちょうだい」
ラビン 「父さんも母さんも甘やかしすぎるんですよ。今のままだと、いつかカシム家の名を汚しますよ」
大臣 「ラビンくん」
ラビン 「ああっ、これは大臣。いやあわざわざお忙しいところをありがとうございます」
  「ロイル!これは弟のロイルです」
ロイル 「ロイルです。父からおうわさはかねがね」
サラ 「調子がいいこと。クリンにあの真似はムリね」

クリン (いない)
バスク(回想) 「でも、せめてゲートの外からでも送らせてもらうよ。ドナン・カシムを指示する一デロイア人としてね」
クリン (もう時間だ)
バスク 「やあ!クリンくん」
クリン 「あっ」
衛兵 「あの、失礼ですが一般の方は」
バスク 「ああ、僕はカシム家のものなんだ」
衛兵 「は?」
クリン 「来てくれたんですね」
衛兵 「お知りあいの方ですか」
クリン 「ええ」

クリン 「時間になっても姿が見えないので来ないのかと思いました」
バスク 「いやあ途中道が混んでね。バスが遅れたんだよ」
デイジー 「クリン!こんなところにいたの。みんな待ってるわよ。もう時間がないわ。はやくみんなのところにいきましょ」
クリン 「ぼく、あっちへはいかないよ。空気が合わないんだ」
デイジー 「どうしてそうなの?お母さま心配なさるわよ」
クリン 「母さんならわかってくれるさ。ぼくはこのバスクさんと… あっ?あれ?」
クリン 「バスクさん… どこへいってしまったんだろう」
デイジー 「どうしたの、クリン。クリン?クリンったら」

総理 「それじゃくれぐれも気をつけてな」
ドナン 「ありがとう」
ドナン 「行ってくる。フィナ、留守を頼んだぞ」
フィナ 「いってらっしゃい、あなた」
ロイル 「いってらっしゃい」
サラ&レーク&ラビン 「いってらっしゃい」

クリン 「いってらっしゃい、お父さん」

バスク 「はあ…はあ…」

ドナン 「ラコック、君のシートは?」
ラコック 「はあ、後ろのキャビンです」
ドナン 「ふむ。機長、ラコックくんに用のあるときは?」
機長 「シートの左端のボタンを押してください。あ、それです。シートバックにマイクが内臓されておりますので、そのほか用事がありましたらこのジュディア中尉にお申し付けください。わが第三空軍の名花です」
ジュディア 「ジュディア・オハラです。よろしく」
ドナン 「なるほど美人だ。ラコック、君はシャトルにいるあいだ失業だぞ」
ラコック 「は。その間、休養を取らせていただきます」
一同 「はははははは」

パイロットA 「おい!リニア砲と機銃には実弾が入っているから気をつけてくれよ!」
整備員A 「はっ」
パイロットA 「わっ」
バスク 「ふっふふ」
バスク 「とあっ」
整備員A 「うわっ」
整備員B 「どうした」
整備員C 「だれかそこにいるのか!」

整備員 「誰だっ、降りてこい」
整備員 「おい、ガードに連絡を取れ」
整備員 「はい」

バスク 「思った通りだ。旧型とあまり変わらん」
バスク 「ようし、行くぞ!」

整備員 「おおっ、動くぞ」
整備員 「うわあっ」

機長 「発進」

機長 「んっ」
機長 「あれはなんだ!」
バスク 「ドナン・カシムめ」
機長 「ぶつかるぞ!右に回避!」
バスク 「ええい」
機長 「うわーっ」

バスク 「くそーっ」
ガード 「中に入っているのは誰か!ただちにコンバットアーマーから出てこい!」
ガード 「うわあっ」
ガード 「うわあっ」

クリン 「なんだ!?あの爆発は」

ラビン 「いったい何があったのだ!?」
「大変です!閣下のシャトルがコンバットアーマーに襲われました!」
ラビン 「なんだと!?」
ラビン 「お母さん!」
フィナ 「…」

ガード 「対アーマーライフルの用意!やつの足を止めろ!」
ガード 「こっちを向きます!」
ガード 「ああっ」

クリン 「はあはあ」

ガード 「中のやつはソルティックに慣れてない。動きが鈍い!直接コックピットを狙撃しろ!」
ガード 「了解!」
バスク 「対アーマーライフル!くそう、やられてたまるか!」
ガード 「ゆっくり下がれ!」
バスク 「ま正面から勝負しようっていうのか。バカにするな!」
バスク 「くそっ、照準が合わない。な、なんで照準が合わないんだ!」
ガード 「ド素人め、こっちが後退しているのがわからないだろ!」
ガード 「てえ!」

クリン 「はあ、はあ…」
無線 「こちら、FS20。テロリストは射殺しました。」
オペレーター 「了解。テロリストの氏名・年齢・出身など、現時点で判明していることを知らせてください」
無線 「死亡3名。重傷4名。軽症8名。車輌大破2…」
無線 「テロリストはデロイア人。推定年齢25・6歳。身長175…」
ガード 「こいつか。デロイアのテロリストってのは」
ガード 「おーおー、派手にやられたなあ」
クリン 「バ…バスク!」

ラコック 「閣下。空港でのことは計画の中にはなかったはずですが」
ドナン 「とんだハプニングだ」
ラコック 「ま、とにもかくにも矢は放たれましたな」
ドナン 「うむ」

次回予告

物語は前奏曲を奏で始める。
呆然と立ちすくむクリンの胸に疑惑の雲が広がる。
デロイア。その遠い星にどんな運命が待ち受けているのか。歴史の歯車が軋み始めた。
次回「デロイアの動乱」
Not even justice, I want to get truth. 真実は見えるか。

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